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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
お互いの哀しみを癒すような口づけが繰り返される。
「…八雲…八雲…和葉が…和葉が…死んでしまった…」
…初めて、弟のためだけの涙が流れた。

慟哭する瑞葉を胸深く抱く。
「…私は、今後悔しております。あの日…和葉様も復讐に巻き込んでしまったことを…。 あの方は、心底瑞葉様を愛しておられました。
申し訳ないことをいたしました」
男の口から漏れたのは、苦しい後悔の言葉だった。

…瑞葉は流れ落ちる涙を拭うこともせずに、男を見上げた。
「…八雲…。でも…和葉は、幸せだ…て言っていたんだ…。和葉の愛するひとは飛行機乗りなんだって…だから…海軍に入って良かった…て…。
…だから、兄様心配しないで…て…。
和葉は、きっと何もかも気づいていたんだね。お前の策略も…僕の和葉に対する引け目も…。
何もかも気づいていて…それでも僕たちを許して…愛してくれていたんだね…。
…天使は和葉だ…僕じゃない…」
「…瑞葉様…」
白い頬に流れる涙を指先を、優しく拭う。

美しいエメラルドの瞳が、瞬きもせずに八雲を見つめる。
「…八雲…、二人で祈ろう…和葉のために…。
僕たちが和葉のためにできることは、祈ることだけだ…」
八雲は静かに頷き、瑞葉を抱きしめた。
…そうして、独り言のように呟いた。

「…お二人は、天使ですよ…。
罪深い私には…あまりに清らかすぎる…」

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