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エメラルドの鎮魂歌
第12章 エメラルドの鎮魂歌 〜瑠璃色に睡る〜
「…本当に…私と死んで下さるのですか?
貴方には幸せに生きて行く権利がある。
…けれど私にはない。
私は…かつて許されない罪を犯しました」
…瑞葉を犯そうとした男を殺した。
忘れてはいない。
けれど、後悔はしていない。
瑞葉を暴力で犯そうとした男を許すことはできなかったからだ。
「貴方のことも騙し続けた。騙して、背徳の罪に堕とし続けてしまった…」
…我が子と知りながら、愛さずにはいられなかった…。
瑞葉は余りに美しすぎて…触れずにはいられなかった…。
身も心も…奪わずにはいられなかった…。
…それが瑞葉を一番傷つけることだと知りながら…。

瑞葉の白い指先が、八雲の端正な唇をそっとなぞる。
すべてに赦しを与えるかのようにキスをする。
そして、そっと微笑む。
「…僕たちは罪深い…。
有島先生の死を…忘れてはいけない…。
僕たちは、幸せになってはならないんだ。
けれど、僕はここでお前と死にたい…。
誰にも邪魔されずに…二人だけの世界をここで終わらせたい…。
そうしたら、永遠に一緒にいられる。
…だから…一緒に…死のう…」
「…瑞葉様…」
八雲は瑞葉の手を取った。
…正しくなくてもいい…。
世間から許されなくてもいい…。
二人の永遠の愛を、ここで完成させるのだ。

…甘く長い口づけを交わす。
瑞葉の美しいエメラルドの瞳が微睡むように細められ、微笑んだ。
「…八雲…愛しているよ…永遠に…」
小さく囁く。
琥珀色の長い睫毛がゆっくりと閉じられた。
…瑞葉の身体から力が抜ける。
その華奢な身体を愛しげに抱き上げる。
「…愛しています。瑞葉様。貴方は永遠に私のものだ…」
八雲は腕の中に睡る永遠の恋人に、静かに口づける。

…そうして瑞葉を抱えたまま、しっかりとした足取りで部屋を後にした。
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