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エメラルドの鎮魂歌
第14章 海に睡るエメラルド 〜エメラルドの鎮魂歌 SS 〜
…目覚めると、目の前には愛おしい男が気遣わしげに瑞葉を見つめていた。
「…瑞葉様…!お目覚めになられましたか。
…良かった…!」
手を握りしめ、八雲は安堵のため息を吐いた。
「…僕は…どうしたの…?お前は…無事なの…?」
二人で心中し、死んだとばかり思っていたのだ。
これが現実とは受け止められずにいた。

八雲に瑞葉が飲ませた薬はただの睡眠薬だったと聞かされ、瑞葉は全身の力が抜けるほどの脱力感を得た。

…幼い頃に薫子が八雲に渡した薬が、毒薬ではなかったのだと…。
薫子の感情は推し量ることは出来ないけれど、自然と涙が溢れた。
薫子は瑞葉のみならず、混血の自分を憎んでいたのだろう。
自分を捨てた母を憎み…それ以上に母が恋しかったのではないか…。

それ故に、純粋な日本人に固執した薫子…。
西洋人の容姿をした瑞葉が生まれた時、彼女は合わせ鏡のように、ひた隠しにした自分を見せつけられたような気がしたのではないか…。

…皮肉なことに、全身全霊で拒絶した瑞葉は薫子の血を一滴も受け継いではいなかったのだ…。
瑞葉は、薫子を思い泣いた。
それは、初めて薫子を微かに理解できたような気がしたからだった。

涙を流す瑞葉を、八雲が静かに抱き寄せた。
「…軽井沢のお屋敷には私が火を放ちました。
私たちを縛るものは、もう何もありません。
…私と貴方はもう、親子ではない。
ただの恋人同士です。
…私と…新たな人生を生きてください」

「…八雲…」
…自ら終わらせたと思っていた人生が、目の前の愛おしい男によって、再び繋がれていた。
涙に霞んだ視野に、美しい深い瑠璃色の瞳が映る。

…この美しい瞳だけを信じて生きていこう…。
後ろは決して振り返らずに…。
美しい瑠璃色の瞳に抱かれて…。

瑞葉は微かに頷き、そっと瞼を閉じた。

「…瑞葉…」
甘く囁かれ、唇を重ねられる。
…男の唇は、燃えるように熱かった。







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