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エメラルドの鎮魂歌
第3章 禁断の愛の果実
「…八雲…八雲…。僕は…もう…死にたい…」
部屋に戻るなり、瑞葉は寝台に泣き崩れた。
八雲が瑞葉を抱き起こし、その震える身体を抱き竦める。
「何を仰るのですか⁈死ぬなどと!」
瑞葉は八雲の腕の中で、子どものようにいやいやをする。
「…僕は…廃嫡になってもいい…。
どうせ僕などこの家では役に立たない人間なんだから…。
この屋敷を追い出されても構わない…。
でも…八雲と引き離されたら…僕は生きてはいられない。…生きている甲斐はない…。
お前がいない場所で生きていても…仕方がない…。
それならいっそ、死にたい…!死んでしまいたい!」

慟哭する瑞葉を強く強く抱き締める。
「そのようなことは私がさせません!
私は貴方をお一人はしません。
貴方のお側を離れはしない!決して…!」
「…八雲…!」
抱き締めている腕を解き、両手で涙に濡れた白く儚げに美しい貌を持ち上げる。
「貴方を離しはしない…!どのようなことがあっても…私は、貴方を死んでも離しません…!」
瑞葉の震える珊瑚色の唇を噛み付くように奪う。
「…んんっ…は…ああ…八…雲…」
瑞葉も縋り付くように、八雲の口づけに応える。
震える舌を男の舌に懸命に絡ませる。
この男を失ったら…自分は世界の全てを喪うのだ…!
そんな悲愴な想いが、狂おしい口づけに向かわせるのだ。

吐息を奪い合うように口づけを交わし、お互いの体温を分け合うように抱き合い、触れ合う内に、瑞葉の心は少しずつ落ち着いていった。

八雲は瑞葉の頬に流れる水晶のような涙を吸い取り、穏やかに言い聞かせる。
「…瑞葉様…。どうか私を信じてください。
私は貴方のお側を離れません。
貴方のお側を離れる時…それは私が死ぬ時です」
瑞葉の蜂蜜色の髪が激しく乱れる。
「嫌だ…それなら僕も一緒に死ぬ」
瑞葉の清らかな白い額に愛情を込めて口づけを落とす。
「…私たちは永遠に一緒です。
愛しています。瑞葉様…」
「…八雲…僕もだ…」
見上げる瑞葉の瞳にそっと微笑かけたのち、彼は表情を引き締め、毅然と告げた。

「これから、大奥様とお話をしてまいります。
また後ほど、伺います。
私を信じてお待ち下さい」




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