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エメラルドの鎮魂歌
第1章 罪と嘘のプレリュード
八雲の叔父である執事は、その余りに情熱的な言葉に驚いた。
彼の甥は元々感情を露わにし、それを口にするするような性分ではなかったからだ。

八雲は昨年、二十歳でこの屋敷にやってきた。
執事の甥である八雲の出生は、複雑であった。
彼の妹は神戸のカフェに勤めていた時分に北欧の船乗りと恋に落ち八雲を産んだ。
しかし、船乗りはあっさりと八雲の母と生まれたばかりの八雲を捨て、故郷に帰国した。

八雲はその船乗りから海より深い瑠璃色の瞳を受け継いだ。
その整いすぎた容姿と瑠璃色の瞳から、八雲は謂れ無い差別と虐めを受けた。
母親は彼を懸命に庇い、身を粉にして働いたが過労と肺病を拗らせ、亡くなった。
八雲は十五歳であった。

それから五年、神戸のホテルの客室係の仕事をしている八雲に叔父から手紙が届いたのだ。

勤めている貴族の屋敷で主人の従者を探している。
一度、会いに来てくれ…と書かれていた。

八雲は叔父に恩があった。
亡くなった母親の借金も肩代わりしてくれ、葬式も出してくれた。
更に、八雲の夜学の費用も負担してくれていたのだ。

八雲は上京し、篠宮伯爵と伯爵の母親…薫子と対面をした。




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