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scramble
第6章 ゆりこ
しかし、私の場合は以前に心の深くに傷つけられた過去があったため一部記憶が残っているんですよ。
失意のドン底に突き落とされて、幸せだった生活を全て奪われた。
でもそんなこと、もうどうでもいいこと。
何故なら私たちはそれ以上の現実を突きつけられることになりそうだから。
ある場所に通わされることになりそうです。
それはある海岸倉庫のダンスホールだった跡地に建設中の施設らしいです。
もう施設は完成していてあとは人数合わせのみ。
我々も含めてあと残り数人くるらしいです。
さっき待合室で待たされていた時に、部屋から話し声が漏れてきて、偶然聞いてしまいました。
だからもういいんです。
なるようになるしかない運命らしいです。わたし
そのぉ。私たちの行き先ってどこにあるか直接聞いたんですか?
はぁ。何でも元は国有地だった場所らしくて、そこをある企業なのか団体なのかは分かりませんが、購入したみたいです。
それが数年前。
あるダンスホールを経営していたみたいです。
現在は改装して何かの施設を作っているみたいですね。
私を面接するときに受けた電話口の女性がそう言っていました。
さっきの管理人は雇われだから裏の事情は全く分からないらしいです。
その電話口の女性。。。確か名前は矢井田亜希子さんだったかしら?
が、おっしゃってました。
それにしても、私たち自身、存在しているのかさえ不安に感じることさえあります。
ねえ?そうは思わない?結衣さん。
あなたは本当に自分が結衣だと思っているんですか?
本当は全く違う人物かもしれない。
戸籍さえ消されていて、記憶も消されて。
あなたのご主人は本当の主人なんですか? 
誰かに与えられた人間がご主人になりすましているだけかもしれないのよ。
本当はこの世の時間さえ存在しない。
我々この星に住んでる人間の都合で24時間と決めて動いているだけに過ぎない。
もう何が本当なのか。
そんなことを考えると夜も眠れなくなることもあるけど、いつのまにか記憶が、飛んでて。
まるで、リセットされるよう。
再び朝が来たら、同じことを考え同じ行動をして、同じことで悩み苦しみ始める。
そう考えるともうどうでもよくなる。
だから私は溺れてしまう。快楽に。
その時だけは、私でいられる気がするから。
私の意思で快楽に溺れられるから。
だからあなたもここへ いらしたんでしょう?結衣さん。さあ
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