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約束 ~禁断の恋人~
第4章 現実

立ち上がり、父親にお辞儀をしてから部屋へ行く彼を見送った。
「敬語を使わせない方が、人間らしいな。研究者の“Z”達は、堅苦しすぎる」
父親はやっと少しだけ、笑みを見せるようになる。
「移植手術は、一人でしたんだろう?」
「うん……」
訊かれるまま、僕は一人での移植手術についての話を始めた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「フィーア?」
父親が帰った後、フィーアの部屋のドアをノックする。
「何?」
すぐにフィーアが出てきた。
「ちょっと、いい? 学習中?」
「ネット見てた。Dr.桐島のことを見つけたから」
父親については、インターネットですぐ調べられる。
心臓移植の権威で、海外からもオファーがあるほど。
医院長だが、難しい手術になりそうな時は執刀することもある。
「何て書いてあった?」
聞きながら、フィーアをリビングのソファーへ促した。
「若い時、Dr.トモとそっくりだった」
インターネット記事の古い写真でも見たんだろう。
長く院内にいる医師や、父親の旧友にはよく言われる。
“Z”だから、フィーアの目は確か。
「僕とDr.桐島、どっちが格好いい?」
「Dr.桐島」
冗談で訊いたが、確かな目のフィーアがはっきりと言う。
「え……。ちょっと、待ってて」
僕は部屋からスマホを持って来て、今人気の俳優の画面を見せた。
「この人は?」
「ドラマに出てた。映画にも」
「格好いい?」
訊くと、フィーアは無言まま。
「どう? 格好良くない?」
フィーアが少し首を傾げる。
父親のことは格好いいと認識しても、人気俳優は違う。彼の中に、何か基準があるのだろうか。
「じゃあ僕は、格好よくないの?」
「Dr.トモは、綺麗」
「え……?」
セックスをしていたから、女性としてインプットされたわけじゃない。
僕の裸も見ていて、男性器があるのも知っている。
今度は美人だと人気の若手女優の画像を見せると、フィーアはまた答えない。

