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約束 ~禁断の恋人~
第5章 変化
「え……?」
顔を離したフィーアは、僕を見つめたまま。
「だって、行ってきますは、キスだろ?」
「どうして、それを……」
知っているのか、と訊く前に思い出す。
僕と海はどちらかが出かける前に必ずキスをしていた。いつも出勤時間が違い、相手を送り出す時の決まりのようなもの。
僕の帰宅が遅くて起きられない時は、海が寝室まで来て、キスをして出勤していた。
フィーアにセックスは教えたが、こんなことは教えていない。でも彼は自然に玄関まで来て、当たり前のようにキスをした。
勿論、そんなこと誰にも話していない。
最近のフィーアはおかしすぎる。
でも、どうしてかと訊いている時間は無い。
照れもあり、僕は足早にマンションを後にした。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
一ヶ月以上振りの研究所。スキャン認証を受け、二階のメインルームへ行く。
朝早いせいか、誰もいなかった。
研究者は夜型が多く、出勤してくるのは昼近く。その代わり、夜中まで作業をする。帰ってもいいが、研究に没頭してしまうせい。
今日は、自分の白衣とネームタグを取りに来ただけ。また備品を持ち出すわけじゃない。
奥のロッカーから出した白衣を着て、クリーニングしてある数着を持って来た鞄へ入れた。
白衣の胸には、病院のロゴがプリントされている。それは、普通のDr.も同じ。
科によってネームタグの紐の色が違うだけで、脳神経外科は紫。
病院の敷地内を歩く時はこの方が目立たないし、身分も分かってもらえる。
すぐに研究所を出て、同じ敷地内の建物に近付いた。
五階建ての大きな白い建物は、海が勤めていた調理部。ここで入院患者の三食を作り、各病室へと運ばれる。
今は朝食の後で、昼食作りまでは少し時間があるだろう。
ドアをノックすると、すぐに中年男性が出来た。
「Dr.……。何か、ご用ですか?」
驚いた彼もまた、僕とは違うデザインの白衣姿。