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約束 ~禁断の恋人~
第5章 変化
「ホリウチさんは、いらっしゃいますか? それか、サクラさんか、ミサキさんかケンさんは……」
フィーアの口から出た名前。
メモしておいた名前を見返しておいた。
「あっ、それなら四階です。どうぞ、こちらへ。汚い所ですが……」
汚いは勿論謙遜だろう。調理部が本当に不潔だったら、放って置けない。
綺麗に磨かれたシンクの前を通り、大きなエレベータへ案内された。
院内へ運ぶための大型ワゴンが、三台は入りそうな広さ。
中年男性が四階のボタンを押してくれて、ドアが閉まる時に頭を下げられる。
彼らはDr.を“偉い人”だと思っているらしいが、それが正しいとは思わなかった。
僕は調理に関して何の知識も持っていないし、レーザーメスとは違う包丁さえ扱えない。もしも清掃員のように掃除が得意なら、研究所はあんなに書類が山積みにならないだろう。
どんな職業でも、その分野に長けている。それぞれの力を合わせ、病院は成り立つのだから。
四階で降りると、銀色に光る棚の間で、丸椅子に座って雑談をしている。
「すみません。脳神経外科の桐島と申しますが……」
「Dr.!」
若い女性が、驚いて立ち上がる。中年の男性と女性。青年も同じように立ち上がり、みんなでお辞儀をする。
僕も丁寧に頭を下げた。
「桐島海のことで、お話しがあるんですが……」
「Dr.。海くんは、どうなんですか?」
中年女性が言うと、みんな口々に海を心配する言葉。
海はここでも、みんなに愛されていると感じた。
「あの……。ホリウチさんと、サクラさんと、ミサキさんと、ケンさんですか?」
「私が佐倉(さくら)です。こっちが、リーダーの堀内(ほりうち)です」
中年の女性が、中年の男性を示す。
自己紹介を受け、若い女性が美咲(みさき)、青年が賢(けん)だと分かった。
話を聞くと、ここの全員が“自然食品管理者”の資格を持っているそうだ。