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約束 ~禁断の恋人~
第5章 変化
ここにいるのは四人。フィーアが“四階の五人”と言っていたのは、自分を合わせて五人なのだろう。
海を合わせれば五人。
この四階では自然食品を扱っていて、一階から三階まではバイオ食品が主だとも聞いた。
「事故の時、私は配達される食品を受け取りに行ってて……。海くんは悪く無いのに、新人の運転するトラックが、いつもと違うルートを通ったから……」
堀内が、呟くように言う。
「騒がしくて見に行ったら、海が……」
美咲は泣き出す。
「海は、治療で回復しました」
僕は嘘をついた。
「それで、ご相談なんですが……」
一度息をついてから、四人を見回す。
「試験的にですが、海をここに通わせて頂けませんか? 見ているだけで、構いませんから。僕も付き添います」
「海さん、来られるんですか?」
賢が嬉しそうに言う。
「良かったわねえ……」と、佐倉はエプロンで涙を拭いている。
「そんなに回復したんだー」
美咲は、若さに似合う明るい笑顔。
「こっちは大歓迎です。すぐにでも。本当に良かった……」
リーダーの堀内の言葉に、僕も安心した。
フィーアは何故か、ここでの記憶を持っている。復帰とまではいかなくても、現場に来ればもっと何かが変わるかもしれない。
僕が知らない場所での海。それが見たいのもある。
「但し。まだ、記憶がはっきりしていなくて……」
四人に海は断片的な記憶喪失だと話し、その場を後にした。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「ただいま」
マンションへ戻ると、フィーアは昼食の準備をしている。
「お帰り。もうすぐ、出来上がるから」
リビングテーブルには、いくつかの料理が並んでいた。
フィーアの学習にと、食事はいつもリビングで食べている。テレビを観ながらで、その感想を後でレポートにまとめるために。
でも食事が始まってもテレビは点けず、明日、調理部へ行く旨を話してみた。
「調理、部……」
フィーアが呟く。
「うん。見てるだけでいいから。僕も一緒に行くし」