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約束 ~禁断の恋人~
第5章  変化


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 調理部の裏手でタクシーを降り、僕は昨日研究所から持って来た白衣を着る。
 昨日堀内さんに教えてもらった通り、ICカードの認証をしてから人用の小型エレベーターに乗った。
 四階に着いた途端、いい香りがしてくる。
「海さん!」
 調理の手を止めて、賢が叫ぶように言う。それが合図になったように、四人共僕達の傍へ来た。
「待ってたのよー」
「海っ、元気になったんだね」
 佐倉と美咲は、涙ぐんでいる。
「海くんとDr.は、ここに座ってください。すいませんね。こんな椅子で」
 堀内に、部屋の隅の丸椅子を示された。
「話したいけど、途中だから……」
 賢が言うと、みんな名残惜しそうに持ち場へと戻る。
 海がしていたような小気味いい包丁の音に、何かを炒める音。
 自然食品を使ったものが、大量に作られていく現場。患者には、必ず自然食品由来のメニューが一品は出る。
 フィーアが言っていた通り、大きな鍋。
 ここの記憶に間違いない。
 暫く眺めていると、フィーアが立ち上がった。
「佐倉さんには、大変だから。男のオレがやる」
 フィーアが、大鍋で何か炒めていた佐倉の大きなしゃもじを取る。
「海くん……。白衣持ってくるわね」
 佐倉はすぐに調理用の白衣とマスクを持って来てフィーアに着せた。サイズがぴったりなのは、海の物だったからだろう。白衣の胸をよく見ると、“桐島”というローマ字表記があった。
 現代の外食などでは機械で料理を混ぜたりするが、ここは自然食品を扱う所。海が以前からマンションでしていたから、当たり前のように考えていた。
 炒め物を終えると、フィーアは大きな魚をさばき始める。そんなフィーアが、生き生きとして見えた。
 まるで海のように……。
 調理を全て終えると、温冷に分けたプレートに皿が載る。それを大きなワゴンへ入れると、賢がエレベーターで五階へ運んで行く。
 五階は、全ての食事を揃える場所だと聞いた。
 そこからは、別のスタッフが格病棟へと届ける。



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