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約束 ~禁断の恋人~
第6章  異変


 異変を感じれば、父親かDr.小早川が訪ねて来るかもしれない。
 今は、冷静な研究者の顔を作る自信がなかった。
 そんな僕を見れば、フィーアを研究所へと勧められるかもしれない。
 体はだるいが、眠る気にもなれなかった。
 コンピーターがスクリーンセイバー画面に変わり、溜息をついてから部屋を出る。
 リビングでは、フィーアがテレビを観ていた。
 食べた後の食器がそのままなのは、僕がキッチンへ入らないように言ったからだろう。
 言いつけは守られていたようだ。
「Dr.トモ」
「何?」
「この人、何度も観た。いつも、笑ってる」
 テレビのお笑い芸人の話。
「それが、その人の仕事なんだよ」
「仕事……」
 フィーアが何か考えているように見えた。
「オレの仕事は、何?」
 調理部で働いたのに、仕事だとは認識していなかったようだ。
「僕と、いることだよ……。ずっと、一緒に……」
「でも、寝る時は別。オレ、仕事をちゃんとしてないよ?」
「仕事には、休みがあるから。それは、分かるよね」
 フィーアが頷く。
 そういった知識も、チップに入っている。
 食器をキッチンの食洗器へ入れて、リビングへ戻った。
「でもこれから、もっと大事な仕事があるんだよ……」
「ん。仕事は、ちゃんとやる」
 真っ直ぐに僕を見る彼から、目を逸らす。
「フィーアは、僕の言うことをきけばいいんだから……」
「ん。分かった」
 幼い子供のように、純粋なフィーア。
 僕が生み出した、新しい命。
 僕の言うことに忠実で、何の抵抗もしない。
「じゃあ、一緒に来て……」
「んっ」
 プライベートルームへ行くと、フィーアを診察台に寝かせた。
「少し痛いけど、我慢して……」
「ん……」
 彼の腕に麻酔を注射すると、一分と経たずに動かなくなる。
 ゆっくりと呼吸はしているが、手術にも耐えられるような強い麻酔。



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