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約束 ~禁断の恋人~
第7章 想い
メインルームのドアを開けると、Dr.小早川とドライが話をしている。
話といっても、Dr.小早川の質問にドライが答えるだけ。
ドライが、妙に無表情だと感じた。それは以前父親が言っていた通り、敬語ばかりのせいだろう。
「桐島……。大変だったようだな。大丈夫なのか?」
「はい。ご心配を、おかけしました……」
Dr.小早川はドライに自室へ戻るように言うと、僕の方へ向き直った。
「今日は、メンテナンスか?」
「はい……」
送っていた学習記録に、簡単なミスは正直に書いていたから、分かったのだろう。あのメールを見るのは、Dr.小早川と父親だけ。だから、ある程度は正直に書いていた。フィーアと自分を殺そうとしたあの日まで。
「フィーア。入ってきて」
念のために、ドアの横へ待たせておいたフィーアに声をかけた。
「ん。Dr.トモ。こんばんは。Dr.小早川」
頭を下げたフィーアは、その場で姿勢よく立っている。
「どうした、フィーア。ミスが多いなんて、悩みでもあるのか?」
Dr.小早川が、笑いながらフィーアに言う。
「ナヤミ……?」
「まあ、座りなさい」
フィーアは僕が頷くのを見てから、Dr.小早川の向かいへ腰を降ろす。
“Z”に、悩みなんてあるはずも無い。好きも嫌いも判断出来ないのだから、悩めと言っても無理だ。
「まさか……」
Dr.小早川がフィーアの近くに行き、顔を覗き込む。僕も近付いて見ると、ドライとは明らかに表情が違う。
豊かとは言えないが、フィーアは漆黒の瞳を動かし、何か考えているようにも見えた。
「フィーア? 何か、考えてるのか?」
「考えなんて……」
僕の言葉を制して、Dr.小早川が続ける。
「今思ってることを、言ってごらん?」
「フィーアは、違う……」
弱々しいフィーアの言葉に、僕は言葉が出なくなってしまった。
また「違う……」だが、何かを考えている。
フィーアが、思いを言葉にしようとしている。