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約束 ~禁断の恋人~
第7章 想い
でも僕は、少しでも多く海の体を残したかった。海の存在が小さくなってしまうようで。だから、困難覚悟で、最小限度の切除で手術を行った。
「95%か……」
誰も言葉を発しなくなった時、フィーアの呟く声。
「幸せに、する……」
「え……?」
恥ずかしかったのもあるが、ずっと僕と海だけの秘密だった。それをフィーアが知るはずもない。
「言った。オレ……。Dr.トモに、言った……」
言葉を確かめるように言うフィーアの腕を取った。
「どうして? そんなこと、話してないのに……」
「凄く前、Dr.トモと一緒に、ここで、夜食を食べた……」
Dr.小早川は、僕とフィーアの遣り取りを黙って聞いている。
「調理部。違う……。作りたかったものと、違う……」
フィーアが「違う……」と言い続けてきたのは、調理部へ行ったのがきっかけかもしれない。確かにその後からだ。彼が「違う……」を言い続けたのは。
「前に行ったよね? 堀内さん達がいる所へ。そこでフィーアは、調理をしたよね?」
「調理部へ、連れて行ったのか?」
Dr.小早川に訊かれ、頷いた。
「はい。メンバーの名前を口にしたので、一度、連れて行ってみました」
「あそこで、作りたいのは、Dr.トモの、食事……」
そんなことを思っていたなんて。フィーアは、本当に思考能力を身に着けていた。
食品部で調理をすれば、僕が食べると思っていたのだろう。僕のためだと思い、作っていたのだろう。
「チップが、残った脳から、記憶を吸収してるのか……」
Dr.小早川が呟く。
それを聞いて、今までのフィーアとの生活を思い出した。
料理の本を学習として読ませていたが、それだけで、あんなに器用に包丁が使えるはずはない。海でさえ、たまに指を切っていたのに。
それを完璧に熟せていたのは、人工知脳と海の脳力の融合だった……。
「フィーア? 綺麗は?」
「綺麗……。Dr.トモは、綺麗……」
父親は“格好いい”で、僕は“綺麗”。
それは、海がよく言ってくれていたこと。