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約束 ~禁断の恋人~
第7章 想い
「フィーア。お前からDr.トモに、恋人になって欲しいって、申し込めばいいんだよ。そしたらまた、トモって呼べるぞ」
「ホント?」
Dr.小早川の言葉に、フィーアの口角が微かに上がった。
笑っている。微かにだが、フィーアが微笑んでいる。
「桐島。今までみたいに過ごせば、フィーアは海くんになるかもしれない。海くんの脳もきっと、それを望んでるはずだ」
僕はフィーアを手放したくないと思っていた。離されるくらいなら、一緒に死んだ方がいいとさえ考えるほどに……。
海だと思っていたつもりが、いつの間にかフィーアとして彼を認識している。
フィーアの「違う……」に困り果て、精神的におかしくなってしまった。
彼も自分の気持ちが上手く伝えられず、暴れたりしてしまったんだろう。
「Dr.トモ。オレの……」
「ストーップ!」
「Stop?」
綺麗な発音で、フィーアが訊き返す。
「後は、お前達のマンションでやってくれ。俺は忙しいんだ……」
「すみません……」
下げた頭を上げると、Dr.小早川がにやりと笑う。
「メインコンピューターの、誤作動を修正しなくちゃいけないから。どうしてか、お前の指紋認証でチップを起動した履歴があるんだ。備品の在庫も、実際と合ってない」
言うと、Dr.小早川は僕達の肩を叩いてからメインコンピューターに着く。
「誰もチップを起動してないし、備品はリストが間違ってた。そうだよな?」
僕のしたことを、隠そうとしてくれている。
「海くんが奇跡的に助かって、良かったな。記憶喪失は、ゆっくり治療すればいい……」
奇跡なんて言葉、Dr.や研究者は好きじゃない。
何もかもが発展を続ける現在。奇跡というのは、おとぎ話の世界でも少なくなっている。
奇跡という言葉自体、意味を知らない子供も少なくない。
原因があり、結果に結びつく。学術的に証明出来ないことは、不明として扱うだけ。
でもこれが、本当の奇跡。