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約束 ~禁断の恋人~
第8章 未来
「トモ、帰るか?」
「あ、うん……」
確かに違う。
ここにいた半日だけで、海は自分を取り戻しつつある。
「じゃ。お先に」
「バイバーイ。またね」
「お疲れ様」
三人に見送られて、マンションへと向かった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「トモ……」
玄関を入って、いきなりのキス。
そのまま、強く抱きしめられた。
「海? 淋しかった……?」
「ああ。トモに会えなくて」
事故に遭ってから、入院している時以外はいつもここに二人でいた。
入院時だって、時間の許す限りホールで一緒にいたから。
「これから、僕は毎日仕事だよ? 海だって、週に二日。慣れてきたら、もっと増やさないと」
「ああ……」
それは理解しているらしい。
「トモ?」
海に手を引かれ、ソファーに座った。
「オレは、桐島海でいいんだよな……?」
「うん」
口調が、以前と違う。
カイやフィーアだった時と。
「調理部に行って、少し分かった。自分のことが……」
「海……?」
鼓動が速まる。
「オレは、事故に遭った。調理部へ出勤する時。そうだよな……?」
何と答えていいか分からない。
海が言っているのは本当だが、何をどこまで思い出したのか。
「トラックが迫ってきたんだ。いつも通らない道のはずなのに。巻き込まれて、ヘルメットが飛んだところまでしか、記憶に無い……」
はっきりと思い出したようだ。
事故以降の記憶が無いのは当たり前。海は脳死状態だった。
「教えてくれよ。何があったんだ? ずっと、トモといた感じだけはある。でも、はっきりと覚えてない」
半日調理部にいたせいなのか、その時が来たのかは分からない。
海は、しっかりと自分自身に戻った。
「トモ?」
顔を覗き込まれ、笑顔を見せてからしがみつく。
「良かった……。本当に良かった……」