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わがままな氷上の貴公子
第9章  ファイナル


「望月。お前なら大丈夫だ」
「はい……」
 肩を叩くと、鈴鹿は関係者席へ行く。
 オレはヘッドフォンをして、集中し直した。
 ウオーミングアップで九十九の演技は見られなかったが、勿論暫定で日本人一位。
 オレがそれ以下の演技をすれば、オリンピック出場は遠くなる。
 何のために、ここまで頑張ってきたんだ?
 本堂は、オレより上に立つだろう。それは覚悟していた。
 まだバックステージにいたが、本堂の演技は始まっているはずだ。
 見たくない。
 出来れば本堂より前に滑りたかった。自分が滑り終わってからなら、控室で中継を観ることも出来たのに。
「望月。行くぞ」
「はい」
 演技を終えた本堂が、キスアンドクライへ移ったらしい。
 後は本堂の得点を待つだけ。その間、オレはリンクを周って体を温める。
 ざわめきが起こり、得点表示板へ目を遣った。
 低い……。
 マイナスの表示があるから、転倒したんだろう。
 数字は苦手だが、大会の得点の時だけは頭が働く。
 低いといっても、全体の暫定一位。さすがに本堂だ。
 内容ははっきり分からないが、転倒を他でカバーしたんだろう。あいつなら、それくらい出来る。
 オレが完璧に滑って、届くかどうか……。
 でも、一位じゃなくて構わない。二位までに入れば。そう考え、気持ちを静めようとした。
 それでも、焦りは完全に消えない。
 九十九だって、いい位置にいる。
「悠ちゃん!!」
 お前……。演技中には声出すなよっ!
 でも、潤の声が聞こえてホッとした。一人じゃないような気がする。
 鈴鹿の元へ行き最後のアドバイスを受けようとしたが、何も言わずにオレを見つめ、両肩を叩かれた。
 そうだ。
 今、頑張れなんて言葉はいらない。
 頑張るのは当たり前だ。
 半周してからリンクの中央へ立ち、静止してポーズを取る。
 流れてくる優しい音色。それに合わせ、軽い動きから始める。
 スピードを速め、勢いを付けてから冒頭の4回転サルコウ。
 着地も綺麗に決まり、安心した。
 拍手と歓声が起こる。
 もう、他のヤツの得点も気にならなくなっていた。
 オレの、最高の演技をするしかない。
 次は、4回転フリップと3トウループのコンビネーションの予定。


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