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わがままな氷上の貴公子
第10章 意地
「お前。何で毎日ウチにいるんだ? 寮は?」
「言ってなかったっけ? 寮、工事中なんだあ。来月いっぱいまで」
「はあ?」
完全な居候じゃないかっ!
「みんな、親戚とか友達の家に泊ってるから。昨日ママさんにも、ここにいていいって言われたあ」
親戚か友達?
オレはそんな扱いか?
「お前が寝るのは、二階だからな! 三階には、絶対来るなよっ!」
「えー。何で?」
こいつがいるせいで、家の老朽化が早まるかもな。室内限定だけど。
「オレは忙しいんだ。最後の大会まで、気が抜けないだよっ!」
そのまま部屋へ行くと、潤が付いてくる。
「来るなって言ったろ?」
鶏頭……。
「いいじゃーん。悠ちゃん……」
お決まりの、抱え上げからベッド落し。
格闘技の技かっ!
「アイスホッケーは、最近どうなんだ?」
話題を作ると、すぐ乗ってくる。
潤が考えている間に、オレは体を起こした。
「大会は始まってて、今度、三回戦だと思う」
両足の裏を合わせて座っているオレを見て、潤が驚いた顔をする。
「悠ちゃん、柔らかいんだね……」
当たり前だろっ!
フィギュアのトップクラスなら、これくらいは普通。普段から癖にすれば、軽いストレッチにもなる。
こいつ。まだオレの凄さが分かってないな……。
普通に接しすぎ過ぎているから、感覚がマヒしているんだろう。
オレは、日本中が注目する“美少年フィギュアスケーター”なんだぞ!
そのオレを、私物みたいに扱いやがって……。
一番悔しいのは、潤が何も言わないことだ。
好きや綺麗とは毎日のように言うけど、だから何だんだよ。
セックスもして、今は居候。
大量の三食と部屋付きの上、セックス付きなんて冗談じゃない。
「悠ちゃん……」
顔が近付いて来たから、横を向いた。
「悠ちゃん?」
言いながらも、潤は押し倒してくる。
だから部屋に入れるのが嫌だったんだっ!
いきなり深いキスをしながら、シャツのボタンを外されていく。
「んんっ! やめろよっ!」
「悠ちゃん……」
胸にキスされて、チクッとした痛み。
「跡着けるなよっ!」
人に見られる場所じゃなくても、風呂に入った時に自分で見える。
今は何となくムカついた。