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わがままな氷上の貴公子
第11章  決意


 フィギュアなんて、ある程度ナルシストじゃないとやっていかれない競技だ。
 自分の演技に酔えるほど、実力以上のものが出せる。
 今の自分が、世界一美しい。
 それくらいに思わなければ……。
 でも、さすがにキツくなってきた。
 息が切れても、穏やかな表情でいなくちゃいけない。
 コレオシークエンスを挟むと、次は、前回勝手に4回転サルコウにしたジャンプ。
 それが成功したお蔭か、ここに4回転ルッツと3トウループを持ってくることになった。
 成功した後体力が限界だったら、最後はトウループ以外の3回転と2回転でも済む。
 提出済みのプログラムでは、最後のジャンプは4サルコウと3ループ。
 転倒してもいいから、最後までプログラム通り滑りたかった。
 そんな弱音のせいかもしれない。
 4回転サルコウのジャンプのタイミングがズレ、軸が曲がってしまった。
 このままでは、連続技に繋げない……。
 連続技が足りなくなる……。
 4回転の時観客からも、思わず漏れた「あっ」という声やどよめき。
 オレも、小さな声を上げてしまった。


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