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わがままな氷上の貴公子
第11章 決意
キスアンドクライへ座ると、鈴鹿と振付師も座ってくる。
やるだけはやった……。
後は、滅茶苦茶に繋げた連続技がどうだったか……。
得点が表示されるまで、いつもより時間がかかっている。
連続技と認めるかどうかの、審議だろう。
鈴鹿が、安心させるように肩を叩いてくる。
オレも祈った。
普段は何も信じてないのに、こんな時だけ……。
電光掲示板に文字が出ると、場内から歓声が上がった。
“1”という数字。この時点で暫定一位なら、後は本堂だけ。落ちても二位に残れる……。
得点へ目を遣って驚いた。
減点はあるだろうが、連続技と認められたとしか思えない得点。
大会レコード……。
この大会の新記録だ……。
心からの笑顔で頭を下げ、バックステージへと急いだ。
スコアを持って来た関係者から、鈴鹿より先に受け取った。
殆どが、最高のレベル4。審議になったと思われるジャンプはさすがに減点だが、イナバウアーや男子には珍しいレイバックスピンのお蔭か、技術構成点も高い。
「望月。やったな」
「望月くん。振り付けをしたかいがあったよ」
「はい……」
鈴鹿と振付師と握手をしていると、すぐにインタビューへ呼ばれてしまった。
オリンピックへ来る選手として、各国から通訳を挟んでのインタビュー。
「はい。あの時は……」
会場の方から、騒めく声が聞こえてきた。
海外のインタビュアー同士が、多分英語で何か話している。
学校にまともに通えないから、英語は苦手だ。他の科目もだが……。
「おめでとうございます。望月さん。金メダルが決まりましたよ」
日本人通訳の、綺麗な日本語だから分かった。
「え?」
「一位が望月さんで、二位が本堂さんという結果になりました」
本堂に、勝った……?
オレが……?
あいつだけは凄いと認めていて、二位を守ろうと必死だったのに……。
逆にそれが、オレを奮起させるきっかけになっていたんだ。
北京オリンピックへ行かれる……。
あいつを連れてってやれる……。
潤……。
今すぐにでも、会いたかった。