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わがままな氷上の貴公子
第11章 決意
表彰台の一番上。
右隣には本堂。左には九十九。
それぞれにメダルを掛けてもらった後、一緒にゆっくりとリンクを周った。
少し進んでは止まり、大きな国旗を三人で広げて客席へのサービス。
オリンピック出場はオレと本堂だが、控えとして九十九も現地入りする。
潤……。
わざと潤と和子さんと塔子の前で止まり、笑顔を見せた。
「悠ちゃん! 悠ちゃん!」
女性客の甲高い声と同時でも、潤の声だけははっきりと分かる。
和子さんは涙を拭っていた。塔子は笑顔での拍手。
上の方の席にいる千絵も、笑顔で思い切り手を振っている。
どうだ?
息子のように育てていたオレがここまで上り詰めたなんて、和子さんも嬉しいはずだ。
千絵。次はアベック優勝だ。覚悟しろよ。
潤……。
自分の恋人がオリンピック選手になるなんて、誇らしいだろ?
もう少し待ってろよ?
テレビ出演や取材が終わったら、家に帰ってやるから……。
その時は、羽交い絞め……抱きしめても許してやるよ。
オレもしっかりと抱きしめてやる。
ママ……。
子供の頃言った通り、オレは日本一の『おうじさま』になったよ。
もう、戯言(たわごと)なんかじゃない。
幼い時の、他愛ない言葉。それを現実にした。
自分の力で。
でもそれは、色々なことがあったから……。
スランプで、自分を見失いそうになっていた千絵。立ち直った千絵からも、逆に「一緒にオリンピックへ」とエールをもらった。
和子さんはいつも蔭で支えてくれて、言葉にはしないがずっとオレを理解してくれている。
塔子のせいでイライラしていたのは、ヤキモチのせいだったんだよな。お前がいなかったら、自分の気持ちに気付けなかったかもしれない。
潤……。
お前がいなかったら、ここまで頑張れなかったかもしれない。
大切なのはスケートだけじゃないと、教えてくれたお蔭。こんなオレに、心からの愛情を分からせてくれた。
スケートもだけど。お前が嫌がっても、もう離さないからな!
たくさんの“大切”があってもいいんだ……。