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わがままな氷上の貴公子
第2章 プライド
何となく見つめ合う状態になった時、グオーという音が聞こえて、潤が笑い出す。
「腹減っちゃったあ」
オレは喰えないぞ……。
「ご飯食べに行こうよ」
「ああ?」
外食は嫌いなんだよ。不味いし、カロリーや糖質が高いし。
このスタイルを維持するのに、結構考えてるんだぞ。
「悠ちゃんと、ご飯食べたことないし」
そんな縋るような目で見るなよ。
お前も一応オレのファンなんだから、夕食くらい付き合ってやらないでもないけど……。
「ウチ、来るか?」
「悠ちゃんち、行ってもいいの?」
嬉しそうに言うのに溜息をついたが、口にしたことを後悔しても仕方ない。
さっき笑わせてもらったし。その礼としてだぞ?
借りを作ったままじゃ、これから上に立ちづらくなる。
「一階で、シャワー浴びていく?」
ベンチに座ってスケート靴を脱でいると、かなり上の方から潤が言う。
こいつスケート靴を履いてると、2mはあるんじゃないのか?
「ウチで浴びればいいだろう」
一階で一緒にシャワーを浴びて、オレの裸を、またボーっと見る気か?
「悠ちゃん、待ってよお」
慌ててスケート靴を脱ぎ出す潤を見てから、オレはエレベーターへと向かった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「ただいま」
リビングでのオレの声に、和子さんがキッチンから顔を出す。
「お帰りなさい……。あの……。お友達、ですか……?」
オレの後ろに立つ潤を見て、和子さんは固まっていた。
和子さんは、オレが生まれる前からいるハウスキーパー。オレが子供の頃は住み込みだったが、数年前から隣の駅のマンションで暮らし始めた。
働き者だし気が利くし、料理も上手い。若い頃の写真を見せてもらったが、結構美人。細身で、短い髪がよく似合っている。
48歳の平均的な身長だろう。潤を見上げて驚いている和子さんに、笑いそうになった。
「フィギュア、やってらっしゃるん、ですか……?」
「ううん。アイスホッケーだよな」
オレの言葉に安心したような和子さんに、潤が自己紹介を始める。
また、田舎の話まで持ち出しやがって。和子さんだって苦笑してるぞ?
でもそのせいで、二人はすっかり馴染んだ様子。