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わがままな氷上の貴公子
第3章 心配
「悠ちゃんっ!」
その声の主が、大股で近寄ってくる。
決まってるよな。潤だ。
「今日は練習日じゃないよな?」
「昨日、忘れ物しちゃって。悠ちゃんが慌てさせるから」
一緒に帰ったのがバレるじゃないか! まさか、それ以上は言わないよな?
「望月!」
赤坂に呼ばれ、仕方なく中央へ行く。その間も、潤が気になっていた。
いくら馬鹿でも、セックスのことまでは言わないだろう。夕食を食べて帰ったなら、友達として成立する。
友達も、建て前だけどな!
昨夜、潤にしがみついて腰を使っていた自分を思い出す。
あれはただの、イライラ解消のためだ!
潤は塔子の隣に座って、ニコニコしながら何か話してやがる。
「望月! 聞いてるのか!」
怒鳴られたが、確かに聞いていなかった。
「レイバックスピンはもっと胸を張れ。お前なら出来るだろう?」
そんなことか……。
さっきは塔子に見せてやっただけで、全力を出したわけじゃない。
発表会での内容は前季と同じだから、クラブ内で№1の滑りのはずだ。
オレが焦点を合わせているのは、まずはグランプリシリーズ。今度こそ、表彰台を目指したい。
そのためには、ある意味潤は邪魔な存在だ。激しいセックスで体力を消耗して、少しだが腰まで痛い。
仕方なく、赤坂の言う通りのレイバックスピンをしてやった。
「気を抜くんじゃないぞ」
そう言うと、赤坂は別のメンバーの方へ行く。
何度かジャンプの踏み切りをし、前季のステップのおさらい。
顔を上げた時に見えたのは、ベンチにいる潤。塔子と千絵に挟まれて、ニヤニヤしているように見えた。
わざと一周してから、気付いたように三人の前で止まる。
「あっ、悠斗っ。せっかく潤くん来てるんだから、下でお茶しない?」
千絵が言うと、潤はニコニコとオレを見た。
「悠ちゃん、行こうよ」
「悠ちゃんて呼ぶなっ!」
千絵と塔子が笑い出す。
「忘れ物取ったんだろう? 何で来るんだよ」
言ってから後悔した。
「悠ちゃんに、会いたかったから」
思った通りの言葉に、溜息をつく。
冗談に取ったらしく、千絵と塔子は笑っている。潤を見ると、ただニコニコしているだけ。
本当に脳みそ筋肉だな!
「私と悠斗はシャワー浴びてくるから、二人で先に行ってて」
千絵の言葉に、潤と塔子が立ち上がった。