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わがままな氷上の貴公子
第3章 心配
「うん」
「じゃあ、悠ちゃん。後でねえ」
「悠ちゃんて呼ぶなっ!」
そう言っても、潤はニコニコしているだけ。
気が抜ける……。
塔子と二人切りになるなんて、あの馬鹿が余計なことを話さないか心配だ。
急いで荷物を取って、一階のシャワールームへ向かった。
どうせ、全体練習なんてくだらない。ただそれぞれに練習をして、複数を受け持つコーチに時々指導を受けるだけ。
ジャンプのタイミングは完璧だったから、今日はもういいだろう。赤坂の指導も、受けてやったし。
それよりも、潤と塔子を二人切りにするのが心配だ。あいつなら、何を話すか知れたもんじゃない。
気が散って足首でも捻ったら、明日からの個人練習にも影響する。
急いでシャワーを浴び、同じ一階の喫茶店へ向かう。
広くても、入ってすぐヤツの図体が目に入った。
千絵は先に来ていて、三人で楽しそうに話している。塔子は身を乗り出すようにして、向かいの潤と話していた。
オレのファンじゃなかったのかよ?
それによっては、扱いも違ってくるぞ?
空いていた潤の隣に座り、紅茶を注文した。
ここの紅茶はまずまず。ダージリンだが、リーフを専用のポットに入れ、砂時計も持ってくる。
和子さんには敵わないが、充分美味しい。
ダージリンの命と言ってもいいのは香り。ここはポットもよく洗ってあって、その香りが充分楽しめる。少し渋みもあるからクッキーが添えられているのも、ここの経営者が紅茶を分かっている証拠。
オレはクッキーを食べないから、潤にやったけど。
「私服の悠斗くん、テレビ以外で初めて見た」
塔子が、嬉しそうに笑っている。
女って、何でもすぐ笑うんだよな。そういうところは苦手だ。
「千絵ちゃんと塔子ちゃんは、中学の同級生なんだって。悠ちゃんは、どんな制服?」
お前は、オレの制服姿にも興味があるのか?
「男子も女子も、普通のブレザーだよ」
「悠斗くんて、共学なんだ……」
塔子がニッコリしているが、何が言いたいんだ?
「そう言えばさー。悠斗と潤くんて、クラブで知り合ったの?」