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わがままな氷上の貴公子
第6章 本音
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
空港ではたくさんの出迎え。
拍手や歓声に、フラッシュの嵐。
オレの横断幕やポスター。名前が書かれた派手なウチワも振られている。
笑顔で、何人かにサインもしてやった。
カナダ大会での結果は金メダル。
国内で№1の本堂が出場しなかったし、海外の主力選手とも上手く当たらなかったせいもある。
表彰台の一番上に立つのは気持ちよかった。でも、戦いは始まったばかり。
何社からものインタビューや、多くのテレビ出演。
訊かれる内容は同じで飽き飽きしていても、“美少年フィギュアスケーター”の笑顔は崩さない。
これが本当のオレ。
称賛と注目。
その自信によって、また磨きもかかっていく。
家へ戻ると、出迎えてくれたのは和子さんと潤。
「なんでお前がいるんだよ……」
「悠ちゃんっ、お帰り! テレビ観てたよっ!」
潤にしては興奮気味。
でも……。
ここはお前の家かっ!
「お疲れ様でした。悠斗さん。食事にしましょう。用意が出来てますよ」
和子さんの言葉に笑顔を見せてから、ダイニングへ行った。
テーブルには、いつもより豪華な夕食が用意されている。
オレがあまり食べないのを知っていても、用意してくれる和子さんの気持ちが嬉しい。
潤が食べるだろうけどな……。
まだシーズン中だから、遅くまでのテレビ出演がなくて助かった。本業じゃないことは、大会の本番より疲れる。
日本へ戻ってきて一番食べたいものは? という質問が多かった。
主力選手は、協会からインタビューへの指導も受ける。
笑顔で「お寿司が食べたいです」と言っておいたが、オレの気持ちとは違う。
本格的な和食だって、世界中にある。それにオレは、食に拘っていない。
大会が近付けば、肉なども多めに摂るようになる。でも白米を避(さ)けるのは、日頃からのクセだ。
次の大会まで一ヶ月。
最低でも三位以内に入らなければ、ファイナル上位は難しい。
本堂は既にアメリカ大会で優勝し、オレと同じ15ポイント。今まで無名だった18歳の九十九(つくも)という選手が、11ポイントを獲っている。
部屋で着替え、食卓へ着く。
ニコニコしている向かいの潤に、溜息をついた。