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わがままな氷上の貴公子
第6章  本音


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 空港ではたくさんの出迎え。
 拍手や歓声に、フラッシュの嵐。
 オレの横断幕やポスター。名前が書かれた派手なウチワも振られている。
 笑顔で、何人かにサインもしてやった。
 カナダ大会での結果は金メダル。
 国内で№1の本堂が出場しなかったし、海外の主力選手とも上手く当たらなかったせいもある。
 表彰台の一番上に立つのは気持ちよかった。でも、戦いは始まったばかり。
 何社からものインタビューや、多くのテレビ出演。
 訊かれる内容は同じで飽き飽きしていても、“美少年フィギュアスケーター”の笑顔は崩さない。
 これが本当のオレ。
 称賛と注目。
 その自信によって、また磨きもかかっていく。
 家へ戻ると、出迎えてくれたのは和子さんと潤。
「なんでお前がいるんだよ……」
「悠ちゃんっ、お帰り! テレビ観てたよっ!」
 潤にしては興奮気味。
 でも……。
 ここはお前の家かっ!
「お疲れ様でした。悠斗さん。食事にしましょう。用意が出来てますよ」
 和子さんの言葉に笑顔を見せてから、ダイニングへ行った。
 テーブルには、いつもより豪華な夕食が用意されている。
 オレがあまり食べないのを知っていても、用意してくれる和子さんの気持ちが嬉しい。
 潤が食べるだろうけどな……。
 まだシーズン中だから、遅くまでのテレビ出演がなくて助かった。本業じゃないことは、大会の本番より疲れる。
 日本へ戻ってきて一番食べたいものは? という質問が多かった。
 主力選手は、協会からインタビューへの指導も受ける。
 笑顔で「お寿司が食べたいです」と言っておいたが、オレの気持ちとは違う。
 本格的な和食だって、世界中にある。それにオレは、食に拘っていない。
 大会が近付けば、肉なども多めに摂るようになる。でも白米を避(さ)けるのは、日頃からのクセだ。
 次の大会まで一ヶ月。
 最低でも三位以内に入らなければ、ファイナル上位は難しい。
 本堂は既にアメリカ大会で優勝し、オレと同じ15ポイント。今まで無名だった18歳の九十九(つくも)という選手が、11ポイントを獲っている。
 部屋で着替え、食卓へ着く。
 ニコニコしている向かいの潤に、溜息をついた。


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