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わがままな氷上の貴公子
第6章 本音
オレがいない間も、ウチに来てたのか?
潤の目的が、分からなくなっていく。
食事とオレ。どっちを喰うためなんだ?
「どうぞ」
「いただきまーす」
和子さんに笑顔で言ってからの潤は、無言で食事を詰め込む。
俺も、久し振りの和子さんの手料理を味わった。
「悠ちゃん。どうしたら、あんなにクルクル回れるの?」
一通り食べた潤が訊いてくる。
「まともに滑れるようになってから訊けよ」
「そうだねえ」
ヘラヘラしやがって……。
「潤くんも、滑れるようになってきたんですよ」
和子さんが笑っている。
訊くと、和子さんは塔子と一緒に潤の大学の試合を見に行ったそうだ。千絵は、オレと一緒の大会に出ていた。
千絵は二位だったが、同じクラブから二人もメダリストが出るのは名誉なこと。お互いにこの先数日間、テレビや雑誌の取材がいくつか入っている。
その分練習時間が減るのは厳しいが、昨日の優勝は大きい。
「悠ちゃん。食べないの? お祝いなのに」
睨みつけても、潤はニコニコ顔のまま。
こいつに、オレの気持ちなんて分からないだろうな……。
「疲れたから休むよ。明日は朝からテレビの後、練習だし」
もう、学校に通っているヒマはない。
和子さんに朝食の時間を頼んでから、部屋へ行った。
ベッドに転がり、溜息をつく。
プレッシャーはある。でも、押し潰されたりはしない。プレッシャーがあるほど、練習にも熱が入る。
次は、ロシア大会。
本堂は最終の日本大会に出ると予想して、コーチの鈴鹿がスケジュールを組んだ。
誰がどの大会に出るか、選手同士は知らない。知れば、みんな強い選手を避けるだろう。
女子の千絵と被っても構わないが、本堂は出来るだけ避けたい相手。
考えながらシャワーを浴びてパジャマに着替えたが、潤が来る様子はなかった。
久し振りに会ったのに、珍しい……。
さすがに今日は、和子さんに諭されたのかもしれない。
疲れた……。
大会そのものよりも、帰国の移動やテレビ局周りに。
明日からのためにも、すぐに眠りについた。