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〜 夏の華 ショートストーリー集〜
第10章 聖なる夜の手紙
ミシェルは恭しく大切にエスコートするように瑠璃子を連れ出した。
瑠璃子は恥じらいつつもミシェルを眩しげに見上げ…微笑んでいた。

ミシェルはすらりと背が高く、金髪の巻き毛はきらきらと輝くように美しく、整った目鼻立ちも相まって誰の目から見ても清潔で魅力的な少年に成長していた。
物静かな性格から、女の子から積極的に告白されても断ってばかりで、男女の色恋には興味がないのだと思っていた。
…けれど…。

…恋とは不意打ちなのだと、暁は思った。
それはいきなり眼の前に現れ、恋するものを虜にし、すべてを変えてしまう…。

…まるで、月城に恋をした自分のように…。
隣に座る歳を重ねても変わらずに怜悧で美しい貌立ちの男を見上げる。
月城は暁に眼を細め、形の良い唇に温かな笑みを浮かべた。
見つめ合うだけで、お互いの気持ちが伝わってくるのだ。
…幸せだ…。
暁は、そっと分からないように月城に頭を預けてみせた。


瑠璃子のスモーキーピンクのドレスの残像が扉から消えると、風間は大袈裟にため息をついてみせた。
「…かくも容易く愛おしい娘は俺の元から飛び去ってしまうのかな…」
「貴方ったら…」
百合子は苦笑しながら優しく風間の腕に手を添えた。
「…瑠璃子ももう十二歳だわ。
ボーイフレンドが出来ても良いお年頃よ」
風間が百合子の白く美しい手を取り、その甲に口づける。
「…俺が初めて君に会ったのも十四歳だった…。
この世の中にこんなに綺麗なひとがいるのかと、自分の眼を疑ったよ…」
「…貴方…」
百合子が恥じらうように…けれど、幸せそうに微笑んだ。

…摺り硝子窓の向こう、ミシェルと瑠璃子が、初々しく遠慮勝ちに…しかししっかりと手を繋ぎ合うのが見てとれた…。
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