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光を求めて
第1章 昼の顔と夜の顔
自分の仕事を手早く済ませ、頼まれた仕事にとりかかった。
昔の資料を引っ張り出し今年の資料と照らし合わせをしながらの仕事は思った以上に時間がかかった。
ひとり、またひとり帰って行く同僚を見ながら私は黙々とキーボードを叩いていく。
いつの間にか仕事を頼んだ田所さんも帰り、静かなフロアーには私が打つキーボードの音だけが響いていた。

「なんだ。電気がついてるからまさかと思って顔を出してみれば彩羽(いろは)か」

静かだったフロアーに顔を出したのは父だった。
私の名前は彩羽。
彩りに羽と書いて彩羽。
色のない私にとって不釣り合いな名前で嫌いな名前だった。

「まだ終わらないのか?」

「はい、あと数時間はかかりますから」

「数時間って……他は誰もいないのか?」

「はい、みなさん帰ったようです」

「お前は……人が良いのもたいがいにしなさい。私の娘だと分かれば押し付けられることもあるまい」

父は大きな溜息をついて呆れた口調。
こんな場面を幾度見られただろう。
そのたびに同じことを言われ続け、それも聞き飽きている。

「押し付けられたわけではありません。私が遅いので仕方がないんです。それより誰かに気付かれる前に帰ってください」

そう言葉にすると父は少し寂しそうな表情を見せ、私が手を付けている仕事の束を持ってペラペラとめくった。


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