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光を求めて
第1章 昼の顔と夜の顔
珍しく定時で終われた私は、いつものようにバーに足を向けて驚いた。
言っては何だけど、maple‐メイプルはいつも以上に賑わっていた。

「今日は流行ってるね」

「ああ。近くでライブがあったみたいだからその流れだな。うるさくて悪いな」

「全然大丈夫だよ。流行って儲かってもらわないと困る」

「道楽でやってるようなもんだ。暇なぐらいが丁度いいんだよ。で、彩羽はいつものか?」

「うん。お願い」

商売っ気のないゲンさんはいつもそう言う。
店の維持費は結構かかっているはずなのに、儲けようなど考えていないのか常連客を一番に考えてくれている。
そんなゲンさんがつくる空間が心地よくて通う常連客も多い。
商売っ気のない店がいつか閉まっちゃうんじゃないかと心配して話しても、いつもの口癖の問題ないの一言で片づけられてしまう。
元々がお金持ちなのか、それとも株や副業で稼いでいるのか……ゲンさんの私生活を誰も知らなかった。
それを根ほり葉ほり聞かないのもこういう場所の特徴でもあると言えるし、そのおかげで私も気兼ねなくこの店で遊んでいられる。


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