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光を求めて
第7章 忌まわしい過去
「私だ。彩羽の婚約は破棄してくれ。そして会社からも全て手を引け!――良いから言う通りにしろ!!何を言ってきても取り合うな。完全に手を引け。いいな!!」
それだけを伝えると、父は携帯を切って私の横に座り私を抱きしめた。
私の記憶している限り、父に抱きしめられた記憶はない。
だけど、嫌ではなかった。
嫌いだったはずの父なのに、抱きしめられると嬉しくて泣きそうになる。
「すまなかった。あの男がそんな嘘を言ってるとは思いもしなかった」
「嘘?」
「ああ。友人との集まりがあるから彩羽を連れて行って紹介したいと言われたから許可をした。夜遅くに、酒を飲んでしまって帰れなくなった。みんなでホテルに泊ることになったから許して欲しいと電話がかかってきたんだ。女性は女性同士泊まるから心配はいらないと言われて信じてしまった」
父の話に顔を上げると、私の流れる涙を拭ってくれた。
そして、頭に手を置いて覗き込むように私の目をまっすぐに見つめてくる。
そこに偽りも何もないのだと告げるかのように……