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光を求めて
第7章 忌まわしい過去
「誰もお前を道具だなんて思ってはいない。それなりの地位のある男だったら彩羽にそれなりの生活をさせてやれると思ったからだ。何度か会って良い人間だと思ったからこそ、結婚を勧めた。それがこんな事になるなんて……お前の心を無視してまで家の安泰を守ろうとは思わない。お前が幸せで笑ってくれさえすれば……私たちは何も望まない」
初めて父の想いを知った。
愛されていないと思っていたのは私の思い違いで、口数の少ない父に気が付いてあげられなかっただけだった。
その後、母と話してみれば両親の若かりし日の事を楽しそうに教えてくれた。
「そうなのよ。あの人って口下手で笑わないし、いつもブスッとしてるでしょう?何を考えてるのか全く分からなくて何度も喧嘩をしたのよ。そのたびに、悪かったって謝ってくるの。はじめは分からない事でも、ずっと一緒に居れば些細な表情の変化でも喜怒哀楽は分かようになるのよ。彩羽にはお父様の変化を見分けるのは難しいかもしれないけど、みんなでご飯を食べる時なんか上機嫌よ」
みんなでごはんを食べている光景を思い出しても、父が笑っている記憶はない。
あれが上機嫌なら……それを見極めるのは難しいと思う。