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光を求めて
第8章 知らないこと
「彩羽はおじさんの会社で頑張ってるんだってね」
先に食べ終わった雅也が箸を置いて話を始め、私は頷きながら食事を続けた。
「そういえば、朝陽もおじさんの跡を継いで頑張っているようだね。あの朝陽も副社長だと聞いたよ」
「うん。数年前から副社長として父の仕事を手伝ってるみたい。若くてかっこいいって女子社員の中で人気だよ」
「朝陽らしいね。それと違って僕は……止まってるのは僕だけかな?」
眉をひそめて苦しそうにぽつりとつぶやく姿が印象的でキュンッと心が鳴く。
「止まってるって、雅也は結婚したんでしょ?」
「結婚?」
雅也は分からないと言った顔をして首を傾けた。
「……あの時の人。菜穂さん……だっけ?結婚考えてるって言ったよ」
忘れたくても忘れられない、あの人の名前。
私を見下したような、勝ちほこったような表情は今でも鮮明に覚えている。
私の言葉に雅也は苦笑いをして言った。
「あの時の……ね。結局はしなかったよ」
「そっか……そうなんだ」
雅也の言葉に自然とそんな言葉が口をついて出ていた。