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光を求めて
第8章 知らないこと
「近いうちに――……会社は吸収合併されることになったんだ」
「へっ?」
雅也の言葉に間の抜けた返事しか返せなかった。
それだけ驚くことで自分の耳を疑った。
「驚くのも無理はないよね。だいぶ前から会社の経営が上手くいってなかったんだよ。その兆候が見え始めた頃に継がせられないかもしれないと言われてね。それでも今まで何とか凌いできたみたいだけど限界だったんだろうね。ちょうど合併の話も持ち上がっていたし父の身体の調子も良くなくてね。すべてから手を引くことにしたんだ」
知らない事ばかりで混乱する。
そんな事、父は一言も教えてはくれなかった。
父だったら雅也の会社を助けるぐらい簡単にできたはず。
「お父様は一言もっ」
「それは、うん。……仕方がないよ。僕がしたことを考えれば当然だと思うからね。だからおじ様を恨まないであげてね」
目じりを下げて笑うのも昔と変わらない。
自分より他人優先でいつも優しかった。
だから他に女がいるのが信じられなくて、あんな場面をみてからも信じられなかった。
「ねぇ、雅也!どうして他のっ……」
その言葉を言いそうになり、ぐっと我慢した。
それを言って今更どうなる??
どうして他に女をつくったり、私を裏切ったりしたの?って聞いてどうなる?