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光を求めて
第8章 知らないこと
「どうしの?」
私を心配そうに見つめる雅也の瞳に吸い込まれそうになるのを我慢して無理やり笑顔を作った。
「ううん。なんでもない。じゃあ、家を継がなかったのなら今は何してるの?」
「今は弁護士をしているよ」
「はぁぁぁぁ???」
またまた意表を突く答えに大きな声を上げて笑われた。
「そんなに驚く事??」
「驚くも何もっ……驚く以外ないでしょうが!!」
怒ったように声を荒げても、雅也はクスクスと笑うだけだった。
だけど会社が人手に渡ると分かった今、それも空元気のような気がしてならない。
あれだけ家を継ぐために頑張っていた雅也が簡単にあきらめたとは思えなかった。
「ごめんなさい、大声だして」
「いや気にしないで。それより何か懐かしいね。こういうの」
笑いながら雅也が口にすると、そうかもしれないと思う。
憎んでいた相手なのに、許せないと思っていたのに、あの時のように普通に笑っていられる自分が不思議だった。
「そうだね。雅也と会って、こんなに笑いあえるとは思ってなかったよ」
私の言葉にまた眉を下げて辛そうな顔をする。
昨日もそうだけど、この手の話は少なからず雅也にも傷を残しているようだった。
裏切った張本人なのにと思いながらそれは口にはしない。