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光を求めて
第8章 知らないこと
それでも、好きだったら言葉で伝えてほしいと思う。
昔、雅也が私に言っていてくれたように、好きだよと……愛しているよ……と言葉にしてほしい。

「雅也は言わないの?今の話だと、言わなくても分かれよってタイプ?」

「どうだろうね。恋愛なんてほとんどしてこなかったから……人に好きだと言ったことはほとんどないかな?」

私の少し前を歩く雅也がどんな表情をしているのか分からない。
だけど、その言葉の意味を考えるとうれしくなった。
私以外の人に好きだと、愛していると言うことがほとんどなかったのだと思うと、喜ぶ私がいた。

「じゃあ雅也もずっとひとりだったの?」

そうだよと言ってくれるのを期待してドキドキしながら聞いた。
雅也はゆっくりと振り向いたけど、逆光でどんな表情をしているのかわからない。

「そうだね。誰も好きにならずにここまで来たかな」

その言葉をどんな気持ちで言ったのか分からない。
いまだに雅也の中に私がいるんじゃないかと思いながら、それを聞く事ができなかった。
それから軽く食事をしてから家に戻ると、いつもと同じゆったりとした時間が流れた。
言葉にしなくても苦痛ではない時間。
それが心地よくて、いつの間にか当たり前になっていた。


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