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光を求めて
第9章 昔のように
「彩羽」
「んっ?何?」
未だ顔を埋めたままの雅也が口を開いた。
何を言うのか分からないけど、私は優しく言葉をかけ背中を撫で続けた。
雅也は子供のように私にしがみ付き何も話そうとはしない。
話したくなったら話せばいいと思い、私は声をかけることなく雅也が自分から話をするまで待っていた。
「彩羽……」
「どうしたの?」
暫くすると同じように私の名前を呼び、私は優しく答えると今度はそのまま話を続けた。
「どうして、彩羽はそんなに僕にやさしくしてくれるの?……僕は彩羽に酷い事したのに……」
雅也の言葉があの時の事を指しているのはすぐに分かる。
私だって雅也に再会するまでは許すつもりはなかったし、ただその気持ちが薄れていっているだけで今も許したつもりはない。
だけど放ってはおけなかった。
こんなに苦しんでいる雅也を突き放すことなんて今の私にはできなかった。
これがきっと母性反応というものだろう。
傷ついた者に対して手を差し伸べてあげたいと思う無償の愛。
それが憎んでいた相手でさえ感じてしまう。