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光を求めて
第9章 昔のように
「お父様……」
「ああ」
父は返事をするだけで何も話さなかった。
お互いにおじ様の言葉が心に引っかかり、言い様のない不安が心の中に充満する。
その想いが現実になったのは、朝日が昇り、まぶしい光が家の中を照らし始めた頃だった。
帰ってきたのが遅かったのもあり、あまり寝ていない私を起こしたスマホを耳に当てた時、とても穏やかな雅也の声が耳に届いた。
穏やかなのに、その内容は穏やかではなかった。
「さっき、父さんが亡くなったよ。最後に彩羽に会えてよかったって喜んでた。ずっと彩羽に会いたがっていたから……最高の親孝行ができたよ」
その声音に微笑んでいる顔が思い浮かぶ。
おじ様が亡くなったのに穏やかでいるのが信じられなくて慌てて病院に向かった。
病院に到着すると雅也は毅然とした態度で葬儀の話などをしていて声をかけることができなかった。
悲しむこともなく手続きをする雅也を、私はおば様と見守るしかなかった。
亡くなる前におじ様が密葬を希望していたと言って、身近な人だけでひっそりと送り出すことになった。
そこに名城家も参列する。
終始泣いている私と違って雅也は気丈にも喪主を務め最後まで涙を流さなかった。