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光を求めて
第11章 幸せになりたくて
「ここ、ここ。たまに他の連中とも来るんだけど焼き鳥がおいしいんだ。東間さんにも一度食べてほしいと思ってたんだ」
暖簾をくぐりながら嬉しそうに話す田所さん。
私に食べてほしかったと言われて少しうれしくなった。
テーブルにつくとおすすめを教えながら手際よく注文する。
全てに無駄がないのはさすがに営業マン。
運ばれてきたビールで乾杯をしても、やっぱり苦くておいしくない。
「苦手なら先に言ってくれなきゃ。残りは俺が飲むから好きなのを選んで」
顔をしかめる私を見て飲み物のメニューを渡してくれた。
その中からカシスソーダを選んで一口飲むと、苦かった口の中がやっと落ち着いた。
「東間さんってお酒苦手?飲み会の時もあまり飲まないよな」
「はい……苦手というか弱いんです。それに甘いのしか飲めなくて」
「東間さんらしいな。甘いのが好きならこっちがいいんじゃないか?ヨーグルト系が甘いって女子社員たちが飲んでいたよ」
にっこりと笑う表情は会社で見る表情とは少し違い、こんなにも柔らかく笑う人だと初めて気が付いた。
それだけ仕事上のつきあいだけしかしていないということだった。