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光を求めて
第11章 幸せになりたくて
「そろそろ出ようか?終電に間に合わなくなる」
「えっ??帰るの?」
「そうだけど?家では嫁さんが待ってるから泊まりはまずいだろう?」
戸惑う私に平然と口にしながら下着と服を私に渡してきた。
その平然と言われた言葉に心が痛み、夢は一瞬にして消えた。
田所さんは既婚者で――私とは浮気。
どんなに愛の言葉をささやかれてその気にさせられても、その真実が変わることはなかった。
「彩羽、こっち向いて」
つきつけられた現実に下を向いて唇を噛みしめていると、優しい声音で呼ばれた。
顔を上げられない私の頬に手を添え無理やり顔を上げられると、そのままキスをされ舌が絡み取られた。
どんなに舌を絡まされても、先ほどまでの熱が戻ることはない。
ただ空しく、そのキスに感じることができなかった。
「ごめん……」
唇が離れると、その唇から放たれた言葉。
その言葉に涙するしかなかった。
初めから既婚者だって分かっていたのに甘い言葉に乗せられた自分が惨めで泣くことしかできなかった。
「遊びなら……他の人としてください……奥さんのいる人とは……私は」