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光を求めて
第13章 生きているこそが
「……もう……あんな思いはたくさんだ!」
緩むことのない腕は少しずつ力を増し、絞り出すかのようにゲンさんは言葉にする。
「大切な娘を亡くすのは、一度でいい……」
震える言葉に、ゲンさんの不安な想いが理解できた。
ゲンさんは私が死のうとした事を知ってしまった。
一番知られてはいけない人に知られて思いださせてしまった。
考えてみれば、あの男が何も話さないわけがない。
訳アリの女を連れて来たと言われてゲンさんが何も聞かないはずがなかった。
あの男に口止めしておけばよかったと後悔しても遅い。
誰よりも大切な人なのに……一番最低なやりかたでゲンさんを傷つけてしまった。
「っごめん……なさい」
「分かってるなら死のうとするな!!俺がどんなに悲しむか……考えろ!馬鹿野郎が!」
謝る事しかできない私に、ゲンさんは涙を流しながら訴えてくる。
ゲンさんの事を考えると最低なことをしたと理解できる。
理解できても、あの時の私にはそれが一番良い方法だとしか思えなかった。
他に自分を救う方法が見当たらない。