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光を求めて
第13章 生きているこそが
「私って何だろう……雅也に裏切られて……上司に言い様に遊ばれて……そう思ったら消えたいって、消えて全てから解放されたいって思ったの…――線路の向こうでね。おいでおいでってする手がいっぱい現れて私を呼ぶの。こっちにきたら全てから解放されるよって、だから私は……」
「死のうとしたのか」
私の言葉を引き継いでゲンさんが言葉にする。
その言葉を口にすることがどんなに辛い事なのか、さっきの話でも良く分かる。
「ごめんなさい……辛いこと思い出させて、本当にごめんなさい」
「それはいいんだ。楓のことでお前が気に病むことはない。ただ……生きていてくれてよかったと、本当にそう思ってるんだ。彩羽がこうして俺の腕の中にいる、それだけでいい。他には何も望まないさ」
生きているだけで他は望まない。
ゲンさんにとっては生きてる事こそが最高の幸せなんだろう。
「ありがと、ゲンさん。私の傍にいてくれて……支えてくれてありがとう」
こんな私の傍にいてくれて本当にそう思えた。
血の繋がりもなければ、知り合いでもなかった私を傍に置いて見守ってくれた。
こんな人は他のどこを探してもいない。