この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
光を求めて
第16章 初デート
「優さん。お昼のお金――」
「男と一緒にいるのに払わせるわけないだろうが」
「でもっ」
「ああ?」
財布を取り出してお金を出そうすると、頭の上から不機嫌な声が聞こえた。
「だって、あのっ……ごめんなさい。慣れてなくて」
男の人と普通のデートをしたことのない私は、おごってもらうのが普通だという認識がない。
「だったら映画館でジュースでも買ってくれ。それでいい」
その言葉に顔をあげると、優しい眼差しを向けられていた。
だから優さんも私を好きなんだと、勘違いをしてしまいそうになる。
普通の恋愛に縁がない私、ちょっとした優さんの気遣いに心ときめかせていた。
約束通り映画館ではジュースとポップコンを私が買った。
だけど、映画のお金は優さんが出してくれて、財布を出そうとすると嫌な顔をされた。
「俺から誘ったんだ。気にするなっ」
その言葉さえキュンッとする。
映画が始まっても、隣に座っている優さんが気になって映画どころではなかった。
暗闇の中、ばれないと思い優さんを見ていると視線を向けられ、顔を近づけて耳元で小さい声で囁かれた。
「どうした?面白くないか?」
慌てて首を振りスクリーンに視線をむけるけど、耳元にかかった吐息の感触が残って身体の奥が熱くなる。