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光を求めて
第19章 彼の想い
「もう一杯何か飲むか?」
「そうだね、お願いしようかな」
お互いに時間を持て余し始め、ゲンさんはカウンターに入りシェーカーを振り始めた。
私は窓から夜景を眺めながら優さんを待つだけで、これと言ってすることはない。
ゲンさんから出されたカクテルに口をつけると、ほとんどと言って良い程アルコールは入っていなかった。
「優が来る前に酔っぱらっても困るだろう。いつもより少なめにしといたから酔う心配はないさ」
そう言いながら煙草に火をつけて今日だけで何本目か分からない煙草を吸いだした。
プカプカと煙草を吸いながら輪っかを天井に向けて吐き出し、お互いに静かな時間を過ごし始めた時だった。
クローズの看板を出しているにも関わらず、お店の扉が開いたのだ。
今日、ここに来るのは優さんしかいないから優さんだと分かっても振り向くことはできなかった。
ただ黙って俯いているとゲンさんの声が耳に入ってくる。
「申し訳ない。今日はやってないんだ。せっかく来てもらったのに悪いね」
ゲンさんの言葉に優さんじゃないんだとホッとして顔を上げると、目の前のガラスに映る人影に目を見開いた。
その人物はガラス越しに私の顔を確認すると、少し寂しそうに笑った。