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光を求めて
第19章 彼の想い
「もちろん、全てを捨てて彩羽と駆け落ちしても良いと考えた。だけど父が亡くなって母も気弱になっていて、そんな母を残して行くことは僕にはできなかった。……もし彩羽を諦めてくれるのなら母に取って一番良い環境を与えてやろうと言われて、またしても彩羽より家族を取ってしまった。手紙もね、色々考えたんだ。だけど消えていなくなる僕が何を書いても本当の事を告げる事ができない。それならば何も言わずに消えた方が良いとね」
全てを話し終えると、雅也はソファーに身体を預けて天を仰いだ。
どうしてもっと早く話しをしてくれなかったのかと言う思いも沸き起こるけど、逆の立場だったらと思うと責められなかった。
「辛かった?二度も私を手離す決断をして……辛かった?」
「辛かった……か。それは僕が口にして良い言葉じゃないんだ。どんな理由があるにせよ、僕が決断した事だからね――でも言葉にしていいのなら……心が張り裂けそうになるぐらい辛かった。もう二度とこの手で触れられないのかと思うと狂いそうだった」
「雅也」
雅也の言葉に、こんな時なのに嬉しくなる。
狂いそうになる程、私の事を好きでいてくれたんだと分かり、自然と笑みがこぼれた。