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光を求めて
第21章 繋り
「須藤さんと名城さんとは、俺の高校時代の先輩なんだ」
吹き抜ける風が潮の香りを運んでくる中、ゲンさんが静かに口を開いた。
「両家とも名だたる名家で俺なんかが近づけるような相手ではなかった。けど体育祭の時に同じチームになり意気投合した。ヤンチャで活発な須藤さんに、冷静沈着の名城さん。性格が正反対に見えても良いバランスが取れていた。初めは俺が須藤さんと仲良くなり馬鹿騒ぎをするようになってな。そんな俺たちを本を読みながら白い目で見る名城さん。初めこそ俺の事を見下すような目で見ていた名城さんも次第に俺を受け入れてくれた。――俺は名城さんも須藤さんも大好きで、ふたりの後ろを名前を呼びながら追いかけて行く……それが日常だったよ」
ゲンさんは遠い日を思い浮かべるように言葉を並べる。
その瞳をみていると、いつだったか、父が学生時代の事を話してくれたことを思い出す。
あの時、1つ年下の友がいたと教えてくれたけど、その人物がゲンさんだと分かる。
「卒業してそれぞれの道に進み、須藤さんと名城さんは会社を継ぎ、俺は俺の夢だった警察官になった」
「ゲンさんが警察官?」
思いもよらない言葉に、私も優さんも目を丸くする。
「そうだ。俺は警察官になり、俺の教育係がおやっさんだ。だから未だに可愛がってくれる」
漸くおやっさんとの関係性がわかり、それでもこのゲンさんが警察官だと言われてもピンとこなかった。