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光を求めて
第22章 光に向かって
『犯人は彩羽を殺すと言ったんだな』
『ええ、お前の娘は預かったって、1億と顧客名簿を用意しろと……でも私一人ではどうしたらいいのか分からなくて、あなたがいない事を伝えると娘が誘拐されたのに呑気だなって……そして……そして』
そう言ってワーっと声を出して母は泣いた。
私はそれを聞いても理解はできなかったけど、父は全てを理解したようで、私の手を引いて母の手と重ね合わせた。
『彩羽はここにいる。犯人が彩羽を殺すことは不可能だ。言っている意味理解できるな?』
父の言葉に母はハッとしたように顔を上げ、私の頬に手を伸ばして撫でてくる。
そして、次の瞬間、母は父に縋りつく。
『だったら!!だったら犯人はっ』
『そうだ。楓ちゃんを彩羽と思っている。楓ちゃんは彩羽の代わりに誘拐されたと考えて間違いないだろう』
父の言葉は衝撃的だった。
まさか私の代わりに楓ちゃんが誘拐されたなんて信じられなくて、私は床に座り込んでしまった。
ただただ時間だけが過ぎていく。
コチコチコチコチと秒針の音だけが静かに響いていた。