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光を求めて
第22章 光に向かって
『待ってくれ!楓を……楓を返してくれ。お願いだから返してくれ』
父から電話を奪いとったゲンさんは、犯人に涙を流しながら懇願した。
――おっさん誰だよ。それに楓って誰だ?ここに居るのは彩羽っていうクソガキだぞ?
『違うんだ。その子は彩羽ちゃんじゃないんだ。私の娘の楓な――』
ゲンさんの叫びも届かず電話は切れ、数日たったある日、無残にも切りきざまれた私の洋服が送られてきた。
洋服には若干の血がついていて楓ちゃんの安否を誰もが心配した。
そして、父はこの洋服を見て顧客名簿を渡す決断を下した。
だけどそれは手遅れだった。
それ以降犯人から連絡が来る事はなく――1か月後に楓ちゃんの遺体が発見された。
楓ちゃんが私と間違われて誘拐された事。
父が会社を守るために楓ちゃんを犠牲にしたこと。
そして私の代わりに楓ちゃんが殺された事。
それを幼い私が耐えきれるわけもなく、楓ちゃんのお葬式が済んだ数日後、目を覚ますと全てを忘れていたという。