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光を求めて
第22章 光に向かって
「もちろん名城さんを恨んださ。直ぐにでも顧客名簿を渡してくれていたらと何度思ったかわからない。けど、何もかも忘れて無邪気に笑う彩羽を見て思ったんだ。犯人が間違わなければこの子が殺されていたかもしれないと……産まれた月も同じで姉妹の様に育った彩羽と楓。俺にとってはどちらも大切でかけがえのない宝だ。家族だ!だから彩羽が殺されればよかったとどうしても思えなかった。それでも、お前の笑顔を見ていると楓を思い出す。そして、もし誘拐されたのが彩羽だったらと……矛盾した気持ちが生まれるんだ。だから名城さん達と離れる事にした。警察も辞め、楓の事で嫁とも離婚して魂の抜けた生活を何年も続けた」
「悪かったと思っている。すぐにでも顧客名簿を渡していればと……今でも後悔しているんだ」
ゲンさんの言葉を聞きながら、父は歯を食いしばり絞り出すような声で謝罪した。
「名城さん。頭をあげてください。名城さんが頭を下げる事じゃない」
「しかし!」
「俺は知ってるんですよ。離れていった俺をずっと気にしてくれていた事……ずっと俺を支えてくれていたこと、それが分った時、心底うれしかったですよ」
ゲンさんはクシャッと表情を崩して笑った。