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光を求めて
第22章 光に向かって
「犯人に誘拐したのが違う子だと教えてしまったんだ。相手は名城家の娘と思って誘拐した。それが違ったとなれば意味がなくなる。冷酷で通っている名城さんが他人の子供の為に要求をのむはずがないと考えれば殺される確率が高くなる。本当の娘だったらもう少し交渉ができたかもしれなかったんだが……だから、俺のミスだったんだ」
ゲンさんの言葉にドキッとする。
やはり楓ちゃんは私の身代わりで殺された。
もし本当に私が誘拐されていたら違う結果が待っていたのかもしれない。
「……ごめんなさい」
「どうして彩羽が謝る?」
「私が誘拐されなかったから……私が誘拐されていれば楓ちゃんは死なずにすんだ、ゲンさんだって苦しまずにすんだ。だからごめんなさい……」
今の私には謝る事しかできなかった。
時を戻せるのならその頃に戻りたい。
そして洋服を交換するこなく私が誘拐されて――殺されたい……
「彩羽、間違えるなよ。悪いのはお前じゃない。ましてや名城さんでもないんだ。悪いのは犯人ただ一人だ。それ以外は誰も悪くはないんだ!」
「でもっ!!」
「彩羽?」
どうしても納得がいかなくて何かを言おうとしてゲンさんの言葉に遮られた。
それはとても穏やかで、今のこの雰囲気に似つかわしくない程穏やかで言葉を失った。