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光を求めて
第22章 光に向かって
「名城さんが言うように、この子は楓が繋いだ命だ。楓によって救われた彩羽の命。そしてその彩羽の命によって授かった新しい命……この子を見た瞬間、やっと、やっと終わった気がしたんだ。恨みも悲しみも全て流れ落ちて消えた……そんな気持ちにな」
腕の中で眠る我が子を見ると、気持ちよさそうに眠っている。
「彩羽が殺されていたらこの子には会えなかった」
「楓ちゃんが生きていたら楓ちゃんの子供を抱けたんだよ」
「そうだな……けどな。そんな事ばかりを考えていたら前には進めない。どんなに嘆いても過去には戻れないんだ。だから俺は前に向かって歩いている。だから彩羽も前を向いて歩いてくれ。楓が繋いだ命……無駄にしないでくれ」
ゲンさんは我が子の頬を撫でながら優しい微笑みを零す。
私にはゲンさんみたいに割り切れないけど……この子だけは守りたいと思う。
「ゲン、本当にすまなかった……いくら謝っても許される事ではないが……」
父はゲンさんに頭を下げる。
深々と頭を下げる父にゲンさんは笑う。
「頭を上げてくださいよ。名城さんには見えない所で色々と助けられてきましたからね。それに、彩羽を俺に預けてくれた。それが一番うれしかったですよ。彩羽を見ながら楓の成長を見れたような……ふたりの子供の成長を見続けれたと感じているんです。だから頭をあげてください」
ゲンさんは中々頭を上げない父の肩を持って頭を上げさせた。
その父の瞳にはたくさんの涙が溢れていた。